冷間鍛造・圧造

鍛造用材料の特性

鍛造用材料の特性

鍛造は高生産性高歩留まりなので、自動車産業をはじめ自転車・自動二輪車・航空機やねじ産業に至るまで、低コスト化に対応できる加工法として知られています。
このため、鉄鋼材料だけでなく、アルミニウム・銅・チタン・マグネシウムなどの各種金属材料に適用されています!

鍛造材料は使用目的に対応して選ばれるため、比較的簡単に鍛造できる材料もあるが、高強度で加工圧力が過大になり工具が損傷しやすいものや、延性が低く加工中に材料割れが発生するもの、工具と焼付きを生じやすいものもあります。
一般的に鍛造が可能な材料と不可能な材料を分けるのは難しいですが、鍛造加工条件(加工機械・加工速度・加工温度・加工度・材料への被膜・型工具)で鍛造ができる場合は、鍛造可能な材料です。
つまり、加工条件が確立しているかどうかで、その材料の鍛造が可否が決まります!

以下では、材料の鍛造特性について、変形抵抗延性焼付きなどの鍛造の力学に関連した観点で概説し、各種鍛造材料の中でも問題とされている材料の鍛造における注意点について説明します。

鍛造の特性について解説していきます!

変形抵抗

圧縮における真応力と対数ひずみ

鍛造する材料の簡単な評価方法には圧縮試験があります。圧縮変形中の荷重をその時点の試験片断面積で割った値を真応力と言います。圧縮試験では端面の摩擦が荷重に影響しますが、ここでは摩擦のない理想的な圧縮試験を考えます。真応力の符号は引張りを正(+)圧縮を負(-)とします。
圧縮において、最初高さがh₀であった試験片が圧縮後に高さh₁になったとき、h₀-h₁圧下量であるので、圧縮率は次のように定義されます。

r=(h₀-h₁)/h₀

材料が受ける変形の大小はひずみで表します。
変形が小さいときにはひずみは圧縮率と同じですが、大きい変形のひずみについては、多数の段階に分けて微小な変形のひずみを計算し、その累積値を考えます。

高さh₀の材料をh₁まで変形するとき、1回に微小量Δhだけ変形すると考えると、ひずみの累積値は次のようになります。

ε=Δh/h₀+Δh/h₀₋Δh+Δh/h₀₋2Δh+Δh/h₀₋3Δh+・・・
=ΣΔh/h₋iΔh

ここでΔhをとても小さくすると次のような積分になります。

ε=∫h0(h0)dh/h=lnh|h0(hl)=ln(h₁/h₀)=ln(1-r)

このようにして求めたひずみ・元の高さと最後の高さの比の自然数を対数ひずみと言います。
圧縮率が1%・10%・50%での対数ひずみは、それぞれ

ln(0.99)=₋0.01・ln(0.9)=₋0.105、ln(0.5)=₋0.693

です。
ひずみの符号は伸びが+なので、圧縮では-になっています。圧縮率が10%以下では対数ひずみの絶対値と余りが変わりませんが、変形が大きくなってくると差が出てきます。

変形抵抗曲線

各種の焼鈍された金属材料の極低速変形で圧縮したときの真応力の絶対値と対数ひずみ絶対値との関係を表した応力‐ひずみ曲線は変形方法によらずほぼ同じになります。

そこで、塑性域での真応力の絶対値を変形状態に依存しない材料特性であることを考え、変形抵抗と呼びます。これは材料が塑性変形させられるときの抵抗の大きさという意味です。

変形抵抗の単位 工学単位 SI単位
力/面積 kgf/mm² MPa(=MN/m²=n/mm²)

単位はこの3つが主に使用されています。
1kgf/mm²=9.8MPaなので、kgf/mm²で表示しているときには9.8倍にするとMPaの値になります。

様々な単位が使われていますね!

ポイントを抑えよう!
相当塑性ひずみ 対数ひずみの絶対値ε(―)相当塑性ひずみと言い、塑性変形の大きさの尺度として用います。
厳密に言うと、対数ひずみから弾性ひずみを差し引いたものが塑性ひずみですが、鍛造では弾性ひずみは塑性ひずみの1/100以下であるのでここでは無視します。
変形抵抗曲線 変形抵抗を相当塑性ひずみにたしいて描いた曲線変形抵抗曲線と呼びます。
変形抵抗曲線は塑性変形に関する材料特性として用いられます。塑性ひずみが0のときの変形抵抗は降伏応力です。
加工硬化・ひずみ硬化 室温では変形抵抗は塑性ひずみの増加とともに高くなりますが、それを加工硬化またはひずみ硬化と言います。
温室で加工硬化された材料を再圧縮すると、前回の変形の最後の変形抵抗で降伏を生じます。
つまり、降伏応力は塑性変形開始時の変形抵抗のことです。高温(鉄鋼では700~800℃以上)では変形中に材料が再結晶を生じて、硬化が後まで残らないことが知られています。
再結晶した素材を再圧縮すると最初の低い降伏応力から塑性変形が始まります。

金属的には再結晶温度以上の加工を熱間加工、再結晶温度以下の変形を冷間加工というが、加工現場では温室での加工を冷間加工、再結晶温度以下に加熱した加工を温間加工と呼んでいます。

変形抵抗の温度と速度依存性

温度の影響

一般的に変形抵抗は温度上昇に伴い低下しますが、炭素鋼では400~600℃に動的ひずみ時効(青熱脆性)と呼ばれる加工硬化の激しい温度領域があります。
700℃以上になると変形抵抗が大きく低下するため、800℃程度で行われる鋼の温間鍛造での変形抵抗は冷間鍛造の行われる室温に比べて半分以下になります。
さらに熱間鍛造は1000~1200℃で行われ、変形抵抗は室温の1/5程度以下の低い値です。

加工速度の影響

変形速度の大小はひずみ速度で表されるが、これは1秒間に生じるひずみの大きさです。

300s₋1はひずみ1.0(一様に圧縮における圧縮率63%でのひずみ)を1/300秒で生じるハンマーの場合であり、材料試験による低速変形(5×10-3S-1)の約6万倍の速度になります。
なので、室温ではひずみ速度が6万倍になると変形抵抗は1.3倍程度になることがわかります。

熱間鍛造では加工速度が高まるとともに変形抵抗も著しく高くなります。例えば、0.35%炭素鋼を低速の油圧試験機(0.1-1)を用いて、1200℃で圧縮すると変形抵抗は80MPa(8.2kgf/mm²)であるのに対して、ハンマー(450s-1)を用いて衝撃的に圧縮すると250MPa(25.5kgf/mm²)にもなり、ひずみ速度が4500倍で変形抵抗が約3倍になります。

変形抵抗の数式モデル

力学的な解析では変形抵抗曲線を数式で表すと便利なので、変形抵抗を数式表す方法が提案されています。
大きなひずみになると変形抵抗がほぼ一定値に近づくので、次のように受けたひずみによらず変形抵抗が一定であるとすると解析には便利です。

式1:Y=Y₀
実際の材料では変形抵抗は完全には一定にならないが、相当塑性ひずみ1.0での変形抵抗をY₀にして解析に用いることにより、加工荷重のよい近似値を得ることができます。
各種の炭素鋼のひずみ1.0での変形抵抗をまとめておきます。
加工硬化はひずみが小さい間は顕著ですが、ひずみが増加するとともに次第に変形抵抗曲線の傾きが小さくなるのが普通です。
式2:Y=aε(-n)
式1の傾向を表す式としてこの指数硬化型の変形抵抗式が用いられます。
ここで指数はn値と呼ばれています。nが0のときは式1の変形抵抗が一定のときであり、加工硬化を生じないことを表します。
nが大きくなるほど加工硬化が大きくなります。多くの金属材料はn=0.2~0.4程度です。
式3:Y=Y₀(ε/(1s-1))m
式2の変形抵抗のひずみ速度εに対する依存性はこのようになります。
この場合のY₀はひずみ速度1s-1での変形抵抗であり、εの単位はs-1、括弧内の分母はひずみ速度の影響を無次元化するためのものです。
例えば材料が炭素鋼の0.35Cの場合にはひずみ速度が0.1-1から450-1になると変形抵抗が80MPaから250MPaになるので、Y=109.5(ε/(1s-1))0.135が得られます。
炭素鋼については圧延のデータのため高温の変形抵抗が詳しく調べられています。
高温(750~1200℃)における炭素鋼の変形抵抗は炭素含有量以外の化学成分(Siなど)によってほとんど影響されず、ひずみ速度依存性指数(m=0.13)と加工硬化指数(n=0.21)は炭素含有量や温度によっても変化しません。
式4:Ym=exp(0.126₋1.75C+0.594C²+2851+2968C₋1120C²/T+273)×ε(‐)0.21×ε0.13
式3の結果炭素含有量C(%)、温度をT(℃)、ひずみ速度εとすると、ひずみがε(-)までの平均変形抵抗Ymは次のように表されます。ただし、実験的に確かめられている範囲はC=0~1.2%、ε(‐)=0~0.5、ε=30~200s₋1、T=750~1200℃であることに注意する必要があります。
ここで、exp()はexを意味します。
この式はひずみ0.5までしか保証されておらず、このままでは大きいひずみには適応できません。しかし、高温では相当塑性ひずみが0.5程度以上になると変形抵抗がほぼ一定値になります。
このため、式4での最終の相当塑性ひずみをε(‐)=1.0として求めた平均変形抵抗Ymは大きい変形が生じる熱間鍛造の変形抵抗Yとして用いることができると考えられます。
例えば、S45C(0.45%C炭素鋼)の1200℃、プレス速度(10s₋1)での変形抵抗は式4にε(‐)=1.0を代入すると、11.54kgf/mm²(113.1MPa)と求めることができます。
炭素含有量とともに変形抵抗は増加しますが、高温になるほど変形が小さくなり1200℃での変形抵抗は炭素含有量によって変化しません。
このように様々な式が使われています!

引張試験と硬さ試験

引張試験

引張試験は材料特性を求める標準的な試験であり、材料特性には引張試験結果が示されていることが多いので、このデータを利用して変形抵抗式を推定することを考えます。
弾性から塑性に連続的に変化して降伏点が明確ではないときには、0.2%の塑性変形を生じるときの真応力を耐力として、降伏応力の代わりに用います。

引張強さ 引張強さ最大荷重を最初の断面積で割った値であり、その単位は真応力と同じですが、荷重をその時点での断面積で割った真応力より小さい値です。
降伏応力と引張強さの差がないと加工硬化が小さく、大きいと加工硬化が大きい材料と判断されます。
引張試験 引張試験ではある程度の変形の後でくびれが生じますが、その開始歪ひずみは最大荷重でのひずみと一致します。
また、式2で示した指数硬化型の材料ではくびれ発生ひずみとn値が一致します。

これらを用いると、耐力(降伏応力)σyと引張強さσtとの比s=σt/σyが分かると以下から式2のaとnが推定することができます。

引張試験より得られたデータから変形抵抗曲線の推定
σt/σy 1 1.12 1,3 1.6 2,0 2.5 3.2 4.1
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35
a/σt 1 1.21 1.41 1.56 1.72 1.87 2.08 2.22

耐力(降伏応力)σyと引張強さσtのデータがあるとき、まずそれらの比σt/σyを求めます。次にσt/σyからnの値を求める。
そしてa/σtの内装値を求め、引張強さσtを代入してaの値を求めることができます。

とても細かく数値化されているんですね!

硬さ試験

硬さ試験は簡便で、微小部分の測定が可能なので塑性加工製品の強度やひずみ分布を推定する際に、しばしば用いられます。
押込み硬さには圧子の形状によりビッカース硬さHV、ブリネル硬さHBなどがあります。

ビッカース硬さは四角錐、ブリネル硬さは球の圧子を材料に押し込み、押込み荷重を圧痕の面積で割った値が硬さです。
これらの硬さの値は圧子の接触圧力であり、変形抵抗をkgf/mm²で表した値の2.5~3倍の大きさです。

硬さの測定値は、ほぼHv=2.5YとHv=3.0Yの間に存在しており、次の式が成り立つことが分かります。

式5:Hv=(2.5~3.0)Y
ロックウェル硬さ(HRA・HRB・HRC)やショア硬さ(HS)は全く異なった硬さの定義なので、変形抵抗と比例関係はないが、硬くなるほど硬さの値が大きくなります。

延性

冷間鍛造・転造などでは加工中に破損が起こり加工限界になることが多いです。
大きな塑性変形を生じた後に金属が破損する現象を延性破壊と言い、破損時の相当塑性ひずみによって延性の大小が評価されます。
化学的には変形中に生じる引張応力が大きいほど破壊ひずみは小さくなり、逆に変形中に圧縮力を加えると破損を生じにくくなります。

引張試験における引張り破壊部の断面積をAf、最初の断面積A₀とすると、断面の減少率ψ=(A₀-Af)/A₀を絞りと言います。
破壊ひずみが大きくなるほど、破損部の断面積Afが小さくなるので、絞りの値は大きくなります。
最初長さがl₀の部分が破損時にはlfになったとすると、体積一定よりA₀l₀=Aflfであることを用いると、破損時の対数ひずみは次のように表されます。

式6:ε(‐)f=1n(lf/l₀)=1n(A₀/Af)=1n(1/1₋ψ)
引張試験では伸びの値も求められます
これは破損時の標点間の長さ変化を表すもであり、一般的に延性の大きい材料は大きな伸びの値を示します。
しかし、標点間には加工硬化特性や変形抵抗の速度依存性などによって形が異なってくるくびれ部を含むため、伸びを延性破壊ひずみに直接結びつけることはできません
破損は避けたいですね…

摩擦と焼付き

摩擦力の単位面積当たりの大きさ、つまり、摩擦応力τは材料・表面粗さ・潤滑剤・変形履歴などによって変化します。
接触圧力が低い間は圧力に比例して摩擦応力が大きくなりますが、圧力が高くなると一定値に漸近します。

摩擦応力が接触圧力に比例する範囲(クーロン摩擦)では、この傾きは摩擦係数μを表します。
無潤滑での摩擦係数は材料によって異なることが分かります。無潤滑での摩擦の原因は素材金属と工具との擬着力によります。
このことは無潤滑での摩擦係数が大きくなるほど素材と工具とが焼付きやすいことを意味しています。

鍛造に用いられる鉄鋼材料

冷間鍛造用鋼材

冷間鍛造では室温で加工するため、材料の変形抵抗が高く、加工割れを生じやすいです。
冷間鍛造が始まった1960年代には、変形抵抗が低く延性のある低炭素鋼が主に使用されていましたが、強度がより高く、焼入れ熱処理により強化できるような炭素含有が多い材料や合金鋼も使用されるようになりました。
このため、変形抵抗を低くし割れにくくした鋼材が冷間鍛造用として開発されてきました。
日本の冷間鍛造用鋼剤は進んでおり、このため日本の冷間鍛造が世界的にもトップレベルになったと言えます。

炭素含有量が多くなると変形抵抗が高くなり延性が低くなる理由
鉄の炭化物であるセメンタイト(Fe₃C)が増加するためです。
セメンタイトはとても強度が高くてもろいため、その割合が増加するとともに材料強度が増加し、延性が低下します。
焼鈍し材や圧延材ではセメンタイトと純鉄(フェライト)とが層状となったパーライトとフェライトの混合した金属組織をしています。
パーライト組織
炭素含有量が0.8%になると全体がパーライト組織になります
パーライト組織の塑性変形では、板状のセメンタイトも変形すつため変形抵抗が高く、また割れたセメンタイトが破損の起点となって延性を下げます。

そこで、炭素量が多い材料では特殊な熱処理を行うことによりセメンタイトを球に近に形にして冷間鍛造に供しています。
この場合には、セメンタイトはほとんど塑性変形しないため、変形抵抗が低くなり延性も大きくなっています。

延性破損
延性破損の起点としては、そのほかに材料内の介在物(硫化物や酸化物などの非金属介在物)や素材の棒材や線材の表面に入った溝状のキズがあり、冷間鍛造用鋼にはこれらを少なくしています。
このため、冷間鍛造用の炭素鋼は炭素鋼でありながら特殊鋼に分類されています。
冷間鍛造性を落とさずに強度を上げるため、クロムを少量添加した肌焼き鋼(0.35%炭素鋼に1%程度のクロムを添加したSCr435など)も多く利用されています。

これ以外にも冷間鍛造用には各種の鋼材が開発され使用されているが、それらを分類すると次のようになります。

鍛造前後の合理化
鍛造前の熱処理、引抜き、ピーリング(皮むき)の簡略化
高い信頼性
表面キズや非金属介在物を出来る限り少なくした材料など
機能
冷鍛性と被削性を兼備した材料、安定した時期特性を持つ材料など

熱間鍛造用鋼材

熱間鍛造では炭素含有量に関係なく変形抵抗が低く、材料の延性が高いため冷間鍛造に比べると鍛造時における材料特性の問題は少ないです。
最近、熱間鍛造後の空冷だけで強度が得られる非調質鋼が多く利用されるようになりました。

調質鋼
炭素鋼や肌焼き鋼は鍛造後に焼入れ、焼戻しの調質処理を行って用いるので調質鋼と言います。

この鋼にV(バナジウム)・Nb(ニオブ)・Ti(チタン)などを0.1%程度の少量添加(マイクロアロイ)し、熱間鍛造後に炭窒化物(VCなど)を析出させることで調質をすることなく所定の強度を確保できる鋼を非調質鋼と呼ばれています。
鍛造における省エネ、コストダウン用材料としてクランクシャフトなどの自動車部品や建設機械用部品などで用いられています。

自動車などの部品にも使われてるんですね!

加工材料鍛造の注意点

鍛造における難加工材料

鍛造可能な材料と比較すると、鍛造が難しいと言われている材料には下記のような特徴があります。

  • 強度が高く工具に加わる圧力が過大になる材料
  • 加工割れが発生する材料
  • 素材への表面被膜が生成しにくく、工具に焼付きやすい材料

鍛造の難易は材料だけでなく加工速度や加工温度にも影響されるので、これらがどのように影響するかを理解する必要があります。
鍛造が難しい材料は、あまり問題意識を持たなくても鍛造できる材料と比較すると異なる点あります。

例えば、快削鋼や快削黄鋼は、切削性を重視しているために、鉛や硫黄などが添加されています。小さい加工率でも割れが発生します。
ただし加工後方法で見ると、張出し加工(据込み加工)では割れが発生しますが、絞り(軸押出し)加工では割れが発生しにくいので、絞り加工の要素を取り入れた加工条件にします。
据込み加工の場合でも、開放金型ではなく、包み込んだ形式にすると割れにくいなど、工夫次第でかなり加工度は改善されます。

延性不足の材料(快削鋼・快削黄鋼・マグネシウム合金・チタン合金)は、加熱することで割れが防止することができます。加工条件を変えるだけでも加工可能になることもあります。

例えば、耐熱用のステンレスの製品を同じ能力の機械3台で生産します。違いは加工速度で1台は55回転/分に設定。2台目は65回転/分で、3台目は75回転/分でした。
55回転/分の機械は朝から晩までノンストップでしたが、回転が上がるにつれて軸が曲がりチャッキングミスの回数が増えてしまい、75回転/分の機械では不良品ばかりで製品にはなりませんでした。
加工速度も鍛造可否の要因です。

色々な素材の鍛造が今後も要求されますが、それぞれの特徴を把握して、対応していくことで新素材の鍛造も可能となります。

新しい素材にも対応できます!

高強度素材の冷間鍛造

高硬度で難加工材とされているものには、冷間工具鋼(SKD11)高速度鋼(SKH55)軸受鋼(SUJ2)などがあります。
これらの難加工材の変形抵抗はS45Cよりかなり高いことが分かっています。

冷間工具鋼SKD11材のカップ成形品を加工限界付近まで加工する場合、後方押出しのパンチに掛かる面圧が工具の耐圧限界より低くなることが重要になります。
SKD11のひずみ1での変形抵抗は約130kgf/mm²(1270MPa)であり、S45Cの1.5倍程度になります。
加工面圧は変形抵抗に比例して高くなりますが、製品の断面減少率を67%とすると、この変形抵抗を用いた計算結果によるとパンチに加わる面圧は3810MPa(389kgf/mm²)に達します。

各種工具材料には圧縮耐力があります。
圧縮耐圧は1回の負荷で工具に塑性変形が生じる限界であるので、疲労強度を持たせるためにはこれより低い値での作業を行わなければなりません。
鍛造可否の判断基準は、鍛造する工具が量産ベースとなる1万個の寿命が保てるかどうかがポイントになります。
これから、計算された3810MPaに比べ20%程度高い圧縮耐力の高い工具材料を使用しないと、量産工具としては寿命に問題があります。

一般的に鍛造可否の判断基準の目安としては、変形抵抗は1000MPa(102kgf/mm²)のラインです。
これ以下であれば鍛造可能ですが、これ以上の場合には鍛造可能であってもより注意し加工しなければ工具寿命に問題が出る可能性が高くなります。

ステンレス鋼の温間鍛造

ステンレス鋼は13Crをベースとしたます。
マルテンサイト系(SUS410)と18Crをベースとしたツェライト系(SUS430)、18Cr‐8Niをベースとしたオーステナイト系(SUS304)に分類されています。
マルテンサイト系やフェライト系は比較的変形抵抗が低く冷間鍛造が可能ですが、オーステナイト系では室温加工においては加工誘起のマルテンサイト変態が起こり加工硬化が大きく、マルテンサイト変態の生じない温間加工で加工されています。

ステンレス鋼の温度依存性は構造用鋼のに比べ温度上昇による変形抵抗の低下が大きいです。

例えば、低合金の肌焼き鋼の500℃における変形抵抗は室温の70~80%であるのに対して、マルテンサイト系やフェライト系ステンレス鋼では50~60%、オーステナイト系ステンレス鋼では50%以下に低下します。このようなステンレス鋼の変形抵抗の温度依存性は温間鍛造に適しており、オーステナイト系のステンレス製ナットは、多段式フォーマでの温間加工での生産が主流になっています。

SUS440Cは多間加工でないと工具に焼付きますし、SUS630は二硫化モリブデンを塗布したスラグを1050℃~1100℃の温度範囲で約20秒間高周波加熱し、その後鍛造機にに搬送して500℃まで空冷されたスタグに、油潤滑を施しオースフォーミングしている鍛造事例もあります。

焼きつきやすい材料

錆びない鋼と言われているステンレス鋼や他の金属材料に比較して軽量であること、高強度であること、耐食性が優れていることが特徴である純チタン・チタン合金は、他の金属との親和力が強いため、一般的に鍛造している炭素鋼・低合金鋼に比べてとても焼付きやすいです。

またステンレス鋼はいったん焼付くと急激に発熱します。
温間鍛造においては炭素鋼・低合金鋼では鉄の酸化物が生成され、この酸化被膜が工具と被加工材との直接接触を防ぎ焼付きを防止する役目を果たしています。

錆びが潤滑の役目をしている、ステンレス鋼では細かいCr酸化物で表面が覆われているため酸化しにくいです。
チタンやチタン合金はチタン表面に形成される酸化チタンの不働態被膜が強固であり、破壊されても酸化性環境では再生が容易です。
両方の材料とも見た目がキレイなために錆びない鋼と思われていますが、錆びてしまった材料でその錆びが他の錆びを防いでいます。
この不働態被膜が災いして、工具との焼付き防止としての潤滑被膜の生成を難しくしています。

ステンレス鋼ではシュウ酸塩被膜やチタン・チタン合金ではフッ化チタン塩被膜などがありますが、炭素鋼・低合金鋼の表面処理としてのリン酸塩化被膜と金属石けん潤滑剤の組み合わせによる潤滑法と比較すると密着強度という点では弱く、皮膜はすぐにはがれて工具に焼付いてしまいます。ステンレス鋼・チタン用に新しい潤滑剤としてヨーロッパで開発されている潤滑システムがあります。
この潤滑処理には次の工程から構成されています。

  1. 表面前処理(アルカリ洗浄・酸洗い)
  2. 電気化学的1次コーティング層をつけます
  3. 潤滑剤(2次コーティング層)をつけます

マグネシウム合金の温間鍛造

マグネシウムは実用される金属材料のうち最も軽い金属です。
携帯電話・ノートパソコン・一眼レフカメラなどの電気機械部品や自動車部品に使用されており、別用途では自動車部品関係のマグネシウム合金の割合は15%程度です。

成形加工法には、鋳造の一種であるダイカスト法、樹脂の射出成形に似たチクソモールディング法プレス法プレスフォージング法があります。
工業的にはダイカスト法チクソモールディング法が一般的になっています。

前者は溶融状態で後者は半溶融状態のMg合金を金型に流し込んで成形します。
第3の成形と言われているプレスフォージング法は加工時間が短い、歩留まりが良いなどの理由で注目を集めています。
成形方法のシェアはダイカスト成形60%、チクソモールディング成形が35%、プレスフォーミング成形は5%と言われています。

私たちの身近なところにも使われているんですね!

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