【業界用語集】
鍛造や圧造業界で使われる言葉をまとめてみました。
「あ行」
・圧入
ニブや駒などをプレスなどで加圧してケースやリングなどに押し込むことです。弾性変形内の締め代が適切と言われています
・圧造力
据込み加工・絞り加工などにおいて、成形加工に要する荷重を圧造力と言います。プレス加工において各工程のトータル圧造力は機械仕様の圧造力を超えてはいけません。
・穴あけ率
穴あけ加工において穴の断面積を素材の断面積で割った値を%で示したものを穴あけ率と言います。低すぎても高すぎても問題発生の要因になります。
・穴あけ加工
中実体の素材にパンチを打ち込み、穴あけパンチとダイスのすき間に材料を押出し中空体を成形する加工法です。
・インサート
ダイスケース・パンチケースなどに圧入もしくは焼ばめされ直接製品形状を形成する部分です。ニブとも呼ばれます。
・応力集中
金型の隅の部分で極端に断面が急変しているとその部分に応力が集中してしまうことです。応力集中は、金型の破損の原因になります。金型分割や素材選定、Rの大きさなどでの対策が考えられます。
・温間鍛造
素材の再結晶温度内で素材を加熱し鍛造成形する方法です。冷間鍛造に比べて加工圧力が低く、熱間鍛造に比べて成形精度が高いです。
「か行」
・開放押出し加工
素材が完全に金型で保持されていない状態で圧力を掛け、断面積を減少させる加工方法で絞り加工の一種です。絞り率だけでなく加工前のL/Dにも気を配る必要があります。
・加工硬化
金属に圧力を加えるとその量に応じて塑性変形した部分が硬化する現象です。冷間圧造を難しくする要素のひとつです。
・加工速度
加工が進むスピードです。油圧プレスでは60mm/s、機械プレスでは30~1500mm/s程度です。
・加工油(工作油)
加工中に素材と金型の摩擦抵抗を減らし、かじり・焼き付きなどを防止するために使用する油のことです。
・キルド鋼
凝固過程で炭素と酸素との間に反応が起こらないようにSiやAlのような強制脱酸剤で脱酸した鋼のことです。
・球状化焼鈍処理
鋼中の炭化物を球状にするために加熱、冷却をすることです。これにより素材の靭性を大きくすることが可能です。
・クランク機構
フライホイールなどのはずみ車からの回転運動を直進運動に変えてラムを作動させる機構です。
・合金鋼
炭素鋼にNi・Cr・Moなどの特殊元素が添加されているものを特殊鋼と言いますが、このなかでも特に熱処理して使用するものを合金鋼と言います。
・工具鋼
切削工具・冷間金型・熱間金型などに用いられるもので、耐摩耗・耐衝撃などの目的により使用されます。その成分によって炭素工具鋼・合金工具鋼・高速度工具鋼に分けられます。
・後死点
クランクプレスにおいて、ラムの最も後退した位置のことです。
・剛性
圧造機械には、かなりの集中的な荷重がかかりますが、この荷重に対して弾性範囲内で変形に耐える能力を剛性と言います。もし、剛性の乏しい圧造機械であれば、穴あけ・パンチなどの早期破損が起きます。
・拘束係数
圧造荷重を計算計算するときに必要な係数です。加工方法・型形状・摩擦条件などによって異なります。
・工程間クリアランス
各工程間で成形された製品が次の工程の金型に入るためにはわずかなすき間が必要になります。そのすき間のことを工程間クリアランスと言います。
・抗張力(引張強さ)
材料に引張荷重を加えたとき、破断するまでの最大荷重をその材料の抗張力(引張強さ)と言います。材料の抗張力以上の荷重をかけるとその材料は破断してしまいます。抗張力の高い素材ほど圧造性が悪くなります。
・降伏点
応力―ひずみ曲線において金属が応力の増加に伴わずに歪みが増加するときの応力を降伏点と言います。
・後方押出し加工
ダイス内に置かれた素材をパンチで圧縮し、パンチとダイスのすき間に材料を移動させて、底のある円筒状の製品を作る加工方法を後方押出しと言います。この場合、素材の流れの方向はパンチ進行方向と逆になります。
「さ行」
・座屈
細長い素材が軸方向に据込まれる際、素材が曲がりを起こすことを座屈と言います。この座屈現象は、素材のL/D、素材の状況、素材両端の固定方法や材料の加工硬化指数など様々要因に影響されます。
・絞り加工
素材の外径部を変形させ、断面を減少させる加工法です。ダイス内で完全に拘束した状態で絞ることを「強制絞り」、完全に拘束されていない絞りを「開放絞り」と呼びます。
・絞り形状
絞り加工をする際に急激に断面積を変化させると、デッドメタルを生じ目的とする形状を得られなかったり、金型が破損してしまいます。これを防止するために絞り部にRやテーパーを付けることになりますが、この形状を絞り形状と言います。
・絞り率
絞り加工における断面減少率のことです。
・潤滑油
圧造機械の摺動部に供給する油のことです。
・焼鈍処理
鋼材を適当な温度に加熱し、その温度に保持したのち徐冷する操作のことです。
その目的は、内部応力の除去・硬さの低下・被削性の向上・冷間加工性の改善・結晶組織の調整などが挙げられます。
・伸線
伸線ダイス(引き抜きダイス)を用いて使用するには径の断面を減少させて必要な径に仕上げること。
・据込み加工
素材をその長さ方向に圧縮し、断面を拡げて成形する方法です。ボルトやリベットなどの頭部成形に用いられています。据込み比が大きいほど座屈が発生しやすいです。
・据込み比
据込み長を据込み前の径で割った値です。据込み率とともに据込み加工の限界値として用います。
・据込み率
加工率の一種で、素材の高さを1回でどのくらいの高さまで据込めるまたは素材の径を1回でどのくらいの径まで拡げることができるのかを判断する値になります。つまり、この値が限界を越える材料自体が割れてしまいます。
・切断加工
その名の通り材料を切断する加工法。一般的にシャーダイス(クイル)とナイフ(クイル)を用いて圧造機械内で行われます。奥深い加工のひとつ
・セミキルド鋼
リムド鋼とキルド鋼の中間程度の脱酸を行い、品質的にも両者の中間のものになり、一般構造用鋼や厚板などに使われています。
・前死点
クランクプレスにおいてラムの最も前進した位置のことです。
・前方押出し加工
ダイスの内部に素材を入れ、パンチの進む方向に素材を流動させて製品を成形する押出し法を前方押出しと言います。この押出し方法では、素材の流れ方向とパンチの進む方向が同じになります。
「た行」
・ダイス側突出装置
ラムの往復運動に連動してクランク軸から取られた駆動力によってダイス側ノックアウトカムとレバーを連動させ、製品をダイスより排出する装置のことです。略してDKOと呼ばれます。
・端面矯正
切断された素材の端面は完全な平面ではなく材料曲がりも残っていることもありますので、そのまま据込み加工や穴あけパンチを押込むと座屈や穴曲がりの要因になります。切断面を平らにし、曲がりを矯正する工程を端面矯正と言います。
・炭素鋼
鉄に2%以下のC・Si・Mn・P・Sの5元素が入った鋼のことを炭素鋼と言います。
・断面減少率
押出し加工において、素材の押出し前の断面積と押出し後の断面積の差を前者で割り%で表したものを断面減少率と言います。
・超硬合金
ダイス鋼、高速度鋼(ハイス)などの工具鋼に比べ、耐摩耗性が非常に優れています。
一般的にWC+6~30%Co+1~2%(Tic+Tac)の組成のものが使われ、靭性を必要とするものにはCo量の多いものが選ばれます。
冷間圧造金型でもっともポピュラーな素材です。
・デッドメタル
塑性変形領域内で塑性変形を起こしていない部分をデッドメタルと言います。
・トランスファー装置
2つ以上のダイス間を素材を移動させる装置のことです。フィンガー(チャック)を取り付けてワークを掴み並行移動もしくは反転移動で次工程に搬送します。90度ターン出来る稀少な圧造機もあります。
トリミング加工
せん断加工の一種で製品外周部を打ち抜く加工法です。
「な行」
・熱間鍛造
材料の再結晶温度以上で塑性加工を行う鍛造法のことです。冷間鍛造に比べ、製品の仕上り精度は悪いですが、加工荷重は低くなります。
「は行」
・パンチ側突出装置
ラムの往復運動を利用して、ラム内に内蔵されたレバーを動かし製品をパンチより排出させる装置のことです。略して「PKO」と呼ばれます。
・ピアッシング加工
せん断加工の一種で主に製品内周部を打ち抜き、貫通穴を成形するときに用いる加工法のことです。如何にバリを抑えてピアッシング出来るかが圧造技術において課題になります。
・ファイバーフロー
冷間にて引き抜き加工をすると炭化物などもろい粒子はいっそう微細化し、結晶粒は伸びの方向に細長くなります。このように結晶粒が細長化し著しい異方性を示すようになり繊維組織となります。この繊維組織は、冷間鍛造において変形に応じて曲がりを生じ鍛流線となります。
・変形抵抗
素材を塑性変形させる場合に、その塑性変形を妨げる単位面積当たりの力を変形抵抗と言います。
・ボンデ処理
鋼にリン酸塩被膜を施し、素材と金型の潤滑を滑らかにする表面処理のことです。特に絞り加工には大きな効果がみられ、金型の焼付きを防止しています。
「ま行」
・摩擦係数
素材が加工される場合、素材と金型の間に摩擦抵抗が発生し加工の不均一さを増加します。摩擦抵抗の尺度として摩擦係数があり、金型の表面処理によって異なりますが滑らかに磨かれた金型であれば、摩擦係数は0.05ぐらいと言われています。
・密閉押出し加工
素材を金型内に入れ、一方向より荷重をかけ材料が一定方向にしか押出しされないようにした加工法のことです。一般的には「強制絞り」と呼ばれています。
「や行」
・焼ばめ
補強リング(ケース)を450℃くらいに加熱し膨張させておき、その中にインサート(ニブ)を入れます。冷却するとケース本来の寸法に戻り、インサートを締め付けます。この結果インサートはケースにより補強された状態となります。
・予備据込み加工
据込み加工においては、材料割れ・座屈などを生じさせないため1回で目的の形状に据込まず、1度据込み易い形状にする必要があり、この加工を予備据込み加工と言います。
「ら行」
・リムド鋼
弱い脱酸性剤によって、凝固した鋼で内部に偏析が多く残っています。
・冷間鍛造
材料の再結晶温度以下で塑性加工を行う鍛造法です。熱間鍛造に比べて製品仕上り精度は良いですが、加工荷重は高くなります。
以上となります。
ご参考くださいませ。