冷間鍛造・圧造

なぜ冷間鍛造?そのメリットと基本技術を徹底解説します!

指この記事の監修者
ニッシン・パーテクチュアル株式会社
代表取締役社長 中村稔

金型関連のものづくりに20年従事し、会社の社長としてリーダーシップを発揮。金型工業会と微細加工工業会にも所属し、業界内での技術革新とネットワーキングに積極的に取り組む。高い専門知識と経験を生かし、業界の発展に貢献しております。

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みなさん、こんにちは。

今回は「冷間鍛造」について解説していきたいと思います。「冷間」と「鍛造」の2つから構成されるこの言葉について、まずは聞き馴染みのない「冷間」から説明していきます。文字だけ見れば「冷たい間に何かするの?」と感じるかもしれませんが、正解は「常温」で行うことを意味しています。ですので、「冷間鍛造」は常温で鍛造するという意味になります。

この「冷間」という言葉は、金属に力を加えて変形させる加工との組み合わせ以外ではほとんど使われない、なんともマニアックな言葉です。金属を変形させる加工の言葉としては、「鍛造」「圧造」「圧延」「引き抜き」「プレス」などが挙げられます。なぜか「プレス」だけがカタカナ英語なのは面白いポイントですね。

さて、「鍛造」について説明します。「鍛造」とは、金属に叩いて力を加えて形を変えることを指します。このプロセスで金属が強くなることから「鍛えて造る」という言葉が来ています。鍛造の歴史は6000年にも及び、叩いて鍛えると対象が強くなることを人類は古くから知っていたのです。

まとめると、「冷間鍛造」とは常温状態で金属に叩いて力を加えることで変形させる工程を指します。では、プレスとはどう違うのでしょうか。プレスも金属に力を加えて形を変える工程ですが、プレスは「板材」から、鍛造は「板材以外」から加工を行うのが一般的です。

同様の内容はYoutubeでもアップしていますので是非こちらもご参考ください。

 

 

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コメンテーター稔

お読みいただきありがとうございました。小学生でもわかるように説明したのですがどうだったでしょ?さらに詳しく知りたい方は下記をご覧ください~!

冷間鍛造とは?

冷間鍛造は、材料を加熱せずに常温で加工する鍛造方法です。これにより、材料の微細構造が変化し、強度や硬度が向上します。主に、金属が軟らかい状態で成形され、精密な部品製造に利用される技術です。冷間鍛造のプロセスは、エネルギー消費が少なく、材料のロスも少ないため、環境に優しいとも言える製法です。この方法では、完成した部品の寸法精度が高く、表面の滑らかさも非常に良好です。

冷間・温間・熱間鍛造の違い

冷間鍛造、温間鍛造、熱間鍛造は、加工する温度の違いによって分けられます。冷間鍛造は材料を常温で加工し、温間鍛造は材料を再結晶温度より少し低い温度で加工します。一方、熱間鍛造は材料を再結晶温度以上で加工する方法で、材料が柔らかくなりやすいです。それぞれの方法にはメリットとデメリットが存在し、加工する材料の種類や必要な物性によって適した方法が選ばれます。

冷間鍛造金型に用いられる型材(材質)

冷間鍛造で使用される金型の材質は、製品の要求品質と製造効率を支える基礎となります。耐久性や硬度、さらにはコストパフォーマンスに優れた材質が選ばれます。

ハイス(高速度工具鋼)

ハイス(高速度工具鋼)は、冷間鍛造金型の材料として広く利用されています。この鋼は高い硬度を持ちながらも、十分な靭性を保つことができるため、繰り返しの衝撃に強く、長期にわたって精密な成形が可能です。特に、複雑な形状の金型に用いられることが多いです。

粉末ハイス

粉末ハイスは、ハイスをさらに進化させた材料で、粉末冶金技術によって製造されます。この技術により、材料内部の微細な構造が均一化され、従来のハイスに比べて耐摩耗性や耐熱性が向上します。冷間鍛造では、この粉末ハイスが高精度な金型材として利用されることが増えています。

超硬合金

超硬合金は、非常に高い硬度と耐熱性を持つ材料です。この材質は、特に耐摩耗性が求められる状況での使用に適しており、冷間鍛造金型の中でも特に厳しい条件下での作業に対応可能です。超硬合金は、長期間にわたって一貫した性能を保ち続けることができ、生産効率の向上に貢献します。

冷間鍛造の加工方法

冷間鍛造にはいくつかの基本的な加工方法があり、それぞれが異なる製品形状や用途に合わせて選ばれます。

前方押し出し加工(絞り加工)

前方押し出し加工は、材料を型の一方に配置し、プレス機構を使って材料を型通りに押し出す方法です。この技術は、特にネジやボルトの頭部を形成するのに適しています。加工される材料は、ダイスによって強い圧力が加えられ、所望の形状に絞り込まれます。この方法では、精密な寸法制御が可能であり、高い生産効率を実現します。

後方押し出し加工

後方押し出し加工では、材料を型の中に入れ、プレスが下から上に向かって材料を押し出します。この方法は、空洞のある部品や、複雑な形状の製品に適しており、材料の流れが均一になりやすいという特徴があります。後方押し出しは、内部にストレスが少なく、材料の疲労を減少させるために用いられることが多いです。

冷間鍛造の加工方法についての説明はいかがでしたか?続けて「冷間鍛建造のメリット」と進む前に、このセクションの内容に追加や修正が必要かどうか確認させてください。

冷間鍛造のメリット

冷間鍛造は多くの製造業で選ばれる技術であり、その理由にはいくつかの明確な利点があります。

寸法精度の向上

冷間鍛造は非常に高い寸法精度を実現します。加工時に材料を加熱しないため、熱による膨張や収縮が生じず、設計通りの寸法で部品を製造できるのです。これは、特に精密な部品が必要な航空宇宙産業や医療器具の製造において、非常に重要な特性です。

表面仕上りの向上

冷間鍛造による部品は、表面が非常に滑らかに仕上がります。これは、材料が固体状態のまま加工されるため、表面が割れたり、酸化したりすることが少ないためです。良好な表面仕上がりは、追加の表面処理の必要性を減らし、製品の品質を向上させます。

高速加工が可能

冷間鍛造は、加熱や冷却の時間を必要としないため、生産速度が大幅に向上します。このため、大量生産が必要な自動車産業や建設業で特に有効です。高速加工により、コスト削減と生産効率の向上が図れるため、多くの企業にとって魅力的な選択肢となっています。

冷間鍛造のデメリット

冷間鍛造は多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。

金型製作費の高さ

冷間鍛造では、非常に高い精度と強度が要求されるため、使用される金型の製造コストが高くなります。特に複雑な形状を持つ部品を生産する場合、金型の設計と製造には高度な技術が必要とされ、これがコストを増大させる一因となっています。

複雑な形状の加工が難しいこと

冷間鍛造は材料を常温で加工するため、材料の塑性(形が変えやすい性質)が限られています。その結果、非常に複雑な形状の部品を製造することが困難になることがあります。このような部品は、熱間鍛造や他の加工方法を用いる必要がある場合が多いです。

冷間鍛造で求められる精度とは

冷間鍛造で求められる精度は極めて高いレベルです。これは、使用される部品の用途が非常に厳しい条件下での使用を想定しているため、微小な寸法誤差も許されない場合が多いからです。具体的には、冷間鍛造で製造される部品は、自動車のエンジン部品や航空機の構造部材、高精度医療器具など、安全性が重要視される製品に多く見られます。

精度を確保するための工夫

  • 設計の最適化: CAD(コンピュータ支援設計)を活用して、製造前に部品の設計を詳細に検証します。
  • 高品質な材料の選定: 精度を損なうことなく加工できる材料を選び、材料自体の質も厳しく管理します。
  • 精密な金型の使用: 金型は精度の要求に応じて精密に作製され、定期的なメンテナンスや点検を行い、常に最良の状態を保ちます。
  • プレス機の精度: 高精度を実現するために、プレス機の性能も重要です。定期的な校正とメンテナンスを通じて、常に一定の力が適切に部品に加えられるようにします。

この精度が実現されることによって、最終製品の性能と信頼性が保証され、ユーザーに安全で高品質な製品が提供されます。

冷間鍛造の主な応用分野

冷間鍛造技術はその高精度と効率の良さから、多岐にわたる産業で利用されています。

自動車産業

自動車産業では、冷間鍛造はエンジン部品やサスペンションの構成要素など、重要な安全関連部品の製造に不可欠です。高い寸法精度と強度が求められるこれらの部品は、冷間鍛造によって製造されることで、耐久性と信頼性を向上させています。

航空宇宙

航空宇宙産業においても、冷間鍛造は重要な役割を果たしています。この分野では、構造部材やエンジンの部品など、極端な条件下での性能が求められる部品が冷間鍛造により製造されています。冷間鍛造の精度と強度は、航空機の安全性と機能性を保証する上で欠かせない要素です。

医療器具

医療器具分野でも、冷間鍛造の精密性は非常に価値があります。手術用の精密器具やインプラントなど、人体への適合性と高い信頼性が求められる医療用具の製造に冷間鍛造が用いられることが多いです。これにより、患者さんに対する安全性が大幅に向上します。

冷間鍛造技術が持つこれらの応用例は、その技術が如何に多方面にわたって重要な役割を担っているかを示しています。どの産業においても、冷間鍛造によって製品の品質が保証され、信頼性が高められています。

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コメンテーター稔

冷間鍛造は歴史のある技術で自動車業界の製造に長年使われました。昨今ではEV化など自動車業界に変革がおきているので今後業界がどのように動いていくか注目しています!

この記事では、冷間鍛造の基本から応用例、さらには金型材質まで、冷間鍛造に関連するさまざまな側面を詳しく解説しました。冷間鍛造は、その高い寸法精度と生産効率の良さから、自動車産業、航空宇宙、医療器具といった多岐にわたる分野で重要な技術として採用されています。

技術の詳細を理解し、それぞれの特性に合った適切な材料選定や設計を行うことが、更なる効率化とコスト削減へと繋がるでしょう。

この記事が、冷間鍛造の理解を深める一助となれば幸いです。

ではまたおあいしましょう!

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