【超硬合金について】
私たちの日常生活や産業の中で、目に見えないところで活躍している「超硬合金」について、その成分、特性、使用方法に迫ります。超硬合金は、その驚異的な硬さで知られ、様々な工具や部品の素材として使用されています。ここでは、超硬合金がどのようにしてその性能を発揮するのか、また安全かつ効率的に使用するためのポイントを詳しく解説します。中学生にもわかりやすい説明を加えながら、この重要な素材の世界を探っていきましょう。
ニッシン・パーテクチュアルでは50年以上超硬合金を扱っております!その経験と知識を生かしてわかりやすく解説いたします!
目次
超硬合金の歴史:どのようにして開発されたのか?
超硬合金は、その高い硬度と耐久性から多くの産業で重宝されていますが、その歴史はどのように始まったのでしょうか?元々は1920年代にドイツで開発されたもので、その優れた特性が徐々に認識され始めました。初めての超硬合金は、タングステンカーバイドが主成分とされ、工具の切削面などに使用されることで、耐摩耗性や耐熱性が大幅に向上しました。
超硬合金の成分と製造法
超硬合金は、非常に高い硬さと圧縮強さを持ち、その性質から幅広い産業で使用されています。主にタングステンカーバイド(WC)、チタニウムカーバイト(TiC)、タンタルカーバイト(TaC)を含む材料で、これらはコバルト(Co)のような靭性の高い金属と組み合わせて粉末冶金法により製造されます。
これらの素材は、特に硬いものや丈夫なものを作るのに使われます。超硬いと書いて超硬にいろいろな金属が合わさって超硬合金その名の通りですね!
超硬合金の特性
特性の概要
超硬合金は、硬度、圧縮強度、弾性係数、熱膨張係数、及び耐熱性に優れています。特に硬度はビッカース硬度で1800に達し、耐摩耗性に富むため多くの工業製品に利用されています。ただし、非常に硬いため、柔軟性は低く、大きな衝撃には弱いです。
超硬合金は非常に硬度が高いです。硬すぎると、ぶつかった時に割れやすくなります。高度の数値の説明は後ほど解説します~
物理的性質
超硬合金の圧縮強度は600kg/mm²にも達し、その弾性係数は鋼の2〜3倍です。この高い弾性係数は、同等の荷重下でも形状の変形が少ないことを意味します。また、熱膨張係数が低いため、高温下でもサイズが安定しています。
物が熱くなっても、形が変わりにくいです。
超硬合金の材質・種類と用途
超硬合金は主にWC-Co系とWC-TiC-TaC-Co系の二つに大別されます。
WC-Co系超硬合金とWC-TiC-TaC-Co系超硬合金は、それぞれ異なる用途と特性を持っています。WC-Co系は一般的な超硬合金で、耐摩耗性が非常に高いため、広範囲にわたる切削工具、鉱山工具、耐摩耗パーツなどに使用されています。一方、WC-TiC-TaC-Co系は特に鋼の切削用途に特化しており、タングステン(WC)、チタニウム(TiC)、タンタル(TaC)を含む複合材料で、さらに高い硬度と耐熱性を実現しています。これにより、特に困難な加工条件下での使用に適しています。
切削工具とは、物を切るための道具です。硬いので他の素材を加工するときに使われることが多いんですね!
超硬合金のメリット・デメリット:他の材料との比較
メリット
- 高硬度: 超硬合金は非常に高い硬度を持っているため、他の金属材料と比較して摩耗しにくいです。これにより、工具の耐用年数を大幅に延ばすことが可能となり、コストパフォーマンスが向上します。
- 耐熱性: 高温状態での性能が非常に高いため、金属加工の際の熱影響を受けにくく、精密な作業が可能です。また、高温下での強度の低下が少ないため、高速での切削作業にも適しています。
- 腐食抵抗性: 超硬合金は化学的に安定した材料であるため、腐食や化学反応による劣化が少ないです。これにより、化学プラントなど厳しい環境下でも使用されることが多いです。
- 自己鋭化性: 使用中に摩耗することで新しい鋭いエッジが露出する性質があり、常に最良の切削性能を保つことができます。
デメリット
- 脆性: 高硬度である反面、超硬合金は脆いため衝撃に弱く、突然の負荷がかかると割れやすいという問題があります。
- 加工難易度: 硬度が高いため、超硬合金自体の加工が困難であり、特殊な機械や技術が必要とされます。これが製造コストの上昇につながることがあります。
- コスト: 高品質の超硬合金は製造コストが高く、初期投資が大きくなることがデメリットとして挙げられます。
超硬合金の機械的性質
硬度と耐久性
超硬合金の硬度は非常に高く、ロックウェル硬度(HRA)で84〜93の範囲です。この硬さは、通常の鋼よりも高く、ビッカース硬度で900〜1850の範囲にあります。
ロックウェル硬度
ロックウェル硬度試験は、材料の硬さを測定する一般的な方法の一つです。この試験では、ある一定の荷重を材料の表面に与えた後、インデンター(圧子)が材料に残した跡の深さを測定します。跡の深さが浅いほど硬いとされます。ロックウェル硬度は「HRA」、「HRB」、「HRC」といったスケールで表示され、これらは使用するインデンターの種類や荷重の大小によって異なります。「HRC」は特に硬い材料を測定するのに用いられるスケールです。
ビッカース硬度
ビッカース硬度試験も材料の硬さを測定する方法の一つで、ダイヤモンド製の四面体の圧子を用いて材料に一定の荷重を加え、その後圧子によって作られた痕の面積から硬度を計算します。この方法は荷重の大きさに関わらず比較的一貫した結果を得られるため、非常に硬い材料から柔らかい材料まで幅広く測定可能です。硬度値は「HV」として示され、この数値が大きいほど材料は硬いです。
ロックウェル、ピッカース硬度とも数字が高いほど、物は硬いです。
その他の物理特性
引張強さは比較的低く、伸び率も0.1〜2%と低いです。しかし、その圧縮強さは非常に高く、ポアソン比も0.17〜0.23と鋼よりも小さい値を示します。
ポアソン比は、材料を引っ張ったときに横方向にどれだけ薄くなるかを示す数値です。具体的には、材料の長さ方向の伸びに対する横方向の縮みの比率を表し、この値が小さいほど材料は横に広がりにくいとされます。
一般的な素材のポアソン比の例
鋼(Steel)
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- ポアソン比: 約0.27~0.30
アルミニウム(Aluminum)
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- ポアソン比: 約0.33
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ゴム(Rubber)
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- ポアソン比: 約0.50
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コンクリート(Concrete)
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- ポアソン比: 約0.20
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ポアソン比が小さいと、物を押した時に横に広がりにくいです。
超硬合金の主要な用途
超硬合金が広く用いられるようになった背景には、その多様な用途があります。最も一般的な用途は、切削工具や掘削機のドリルビットとしての使用です。これらの工具に超硬合金が使用されることで、より硬い材料を効率良く切削できるようになりました。また、耐熱性が求められる航空宇宙産業でも重要な役割を果たしています。さらに、医療分野では、外科手術用の器具に使用されることもあり、その精密さが求められる場面での利用が進んでいます。
将来の超硬合金:技術の進歩がもたらす可能性
超硬合金の技術は今後も進化を続け、新たな可能性を広げていくことが期待されています。研究者たちは、更に耐久性や耐熱性を向上させた新合金の開発に取り組んでおり、これが実現すれば、例えば宇宙開発技術や深海掘削など、より過酷な環境下での使用が可能となります。また、リサイクルしやすい超硬合金の開発も進められており、持続可能な製造業の発展に寄与することが期待されています。このように、超硬合金はその特性を活かして多岐にわたる分野でのイノベーションを推進するキーとなり得るのです。
超硬合金が業界にもたらすポテンシャルは単なる「高性能」を超えています!この素材は、その圧倒的な硬度と強度でまさに革命的!それを完璧に理解し、巧みに扱えば、私たちの製造技術は新たな次元に突入します。加工の精度を極限まで引き上げ、未来の工業をリードするチャンスです。この驚異の材料を使いこなし、技術革新の最前線を走り抜けましょう!
代表取締役社長 中村稔
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