微細加工

放電加工技術の精密進化:微細加工で拓く新たな可能性

放電加工(EDM)とは?

放電加工(Electrical Discharge Machining、EDM)とは、非接触型の精密加工技術の一つで、電極と被加工物の間に高電圧の電気放電を発生させることにより、金属などの導電性材料を微細加工する方法です。この技術は、非常に硬い材料や複雑な形状が求められる金型製作など、従来の機械加工では難しかった作業を可能にします。電極と被加工物との間に微小なスパークが連続して発生し、その熱エネルギーで材料を溶解・蒸発させて加工を行うのが特徴です。

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ミノル的視点

ニッシン・パーテクチュアルでは多種多様な放電加工機を取り揃えております。用途に応じて様々な加工に対応いたします!

放電加工の原理

放電加工の基本原理は、「放電現象」を利用した加工方法です。具体的には、加工電極と被加工物の間に小さなギャップを保持しながら、電源からの電圧を印加することで微小な放電スパークを発生させます。このスパークが局所的に高温を生じ、被加工物の表面を溶解・蒸発させて材料を除去することにより加工を行います。

この放電スパークは一瞬のうちに発生し消失するため、加工面には熱が集中しにくく、熱影響ゾーンが非常に小さいことが特徴です。また、電極自体は加工物に触れることなく加工が進むため、物理的な力が加工面に伝わらず、デリケートな部品や複雑な形状も精密に加工が可能です。

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ミノル的視点

放電加工では、被加工物と電極間のギャップに調整が重要です。ギャップが不適切だと放電スパークが不安定になり、加工精度に影響を及ぼす可能性があります。適切なギャップの維持には、高度な制御技術が求められます。

放電加工機の種類

放電加工機には、大きく分けて三つのタイプがあります。「ワイヤーカット放電加工機」、「型彫り放電加工機」、そして「穴あけ放電加工機」です。それぞれの機械は用途に応じて異なる特性を持ち、加工の精度や効率を大きく向上させます。

ワイヤーカット

ワイヤーカット放電加工機は、薄い金属ワイヤーを電極として使用し、被加工物を精密に切削する装置です。この方法は、非常に複雑な形状や細かい部分の加工に適しており、金型製作などの精密工業に不可欠です。

型彫り

型彫り放電加工機は、プリセットされた形状の電極を使用して被加工物を彫刻するタイプの機械です。この機械は主に金型の製造に使用され、高い精度と複雑な形状が求められる場合に特にその力を発揮します。

穴あけ(細穴)

穴あけ放電加工機は、小さな穴や特殊な形状の穴を高精度に加工するために用いられます。医療機器の製造や航空宇宙部品の加工など、特定の産業で重宝されています。

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ミノル的視点

放電加工機は非接触加工で材料へのダメージが少ないのが特徴です。ワイヤーカットは非常に細い箇所も正確にカット可能、型彫りは深い彫りも精密加工でき、穴あけは微細な穴の加工に最適です。

放電加工の電極について

放電加工において、電極は非常に重要な役割を担います。電極の材質、形状、そしてメンテナンス状態が加工精度に直接影響を及ぼすため、適切な電極の選定が必要不可欠です。電極材料には銅や黄銅が一般的に使用されますが、加工物や加工条件によってグラファイトや他の金属が用いられることもあります。

電極の形状は加工する製品の形状に依存し、非常に精密な設計が求められます。加工精度を高めるために、電極は正確に加工され、非常に細かい部分まで再現可能な精度が要求されることも少なくありません。また、電極の消耗も放電加工の重要な要素であり、消耗率を低減するための技術も日々進化しています。

このように、放電加工では電極が直接的な加工能力に影響を与えるため、電極の設計からメンテナンスに至るまで、細心の注意を払う必要があります。電極は加工の心臓部とも言える部分であり、その品質管理が全体の加工品質を左右すると言っても過言ではありません。

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ミノル的視点

放電加工における電極の重要性は非常に高く、特に材質と形状は加工精度に直接影響します。銅や黄銅の他に、耐消耗性に優れたグラファイトもよく使用され、精密な形状制御が可能です。

放電加工(EDM)に適している素材

放電加工は主に導電性のある材料に適用される加工方法です。この技術の利点を最大限に活用できるのは、特に硬度が高く通常の機械加工では困難を極める金属や合金です。

放電加工機で使われている素材

  • 超硬合金
  • チタン
  • アルミ
  • 金・銀・銅
  • ステンレス(SUS、STAVAX)
  • モリブデン
  • インコネル

金属材料の選択基準

適切な金属材料を選ぶことは、放電加工の効率と品質を大きく左右します。一般的には、銅や鋼、硬質合金などが好まれますが、加工内容によって最適な材料は異なります。材料の選定には、導電性だけでなく、熱伝導率や融点も考慮されるべきです。

絶縁性と熱伝導性

放電加工では、材料の絶縁性と熱伝導性が重要な役割を果たします。これらの物理的特性が加工精度に直接影響を及ぼすため、素材選びには慎重に行う必要があります。絶縁性が高い材料は放電エネルギーを効率良く材料内部に集中させ、熱伝導性が高い材料は加工熱を速やかに逃がすことが可能です。

加工品質を左右する素材特性

素材の物理的特性は、加工後の品質に大きく影響します。たとえば、硬質合金や特殊なステンレス鋼は、その高い耐熱性と強度によって精密な加工が可能となります。これらの素材は、高い精度を保ちつつ、生産効率を向上させることができるため、高価ながらも広く利用されています。

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ミノル的視点

放電加工では、硬質合金や特殊ステンレスが高い耐久性と精度を提供します。素材選びは導電性と熱特性を重視し、適材適所に配慮が必要です。

放電加工のメリット

放電加工は多くの工業分野で重宝されており、その理由は以下のメリットによるものです。

高い加工精度と品質

放電加工は非常に高い加工精度を実現します。これは、放電エネルギーが非常に局所的に働くため、微細な部分まで精密に加工が可能であるからです。また、加工時の力が加工物に伝わりにくいため、複雑な形状や細かいデザインも正確に再現できます。

硬質材料でも加工可能

放電加工は硬質材料も加工できる大きな利点があります。たとえば、超硬合金や硬化ステンレスなど、通常の機械加工では削ることが難しい材料も、放電加工によって形状を整えることができます。

複雑な形状も自由自在

非接触加工である放電加工は、内角の鋭い加工や奇妙な形状の穴開けなど、他の加工方法では実現困難な形状も自由自在に加工できます。これにより、デザインの自由度が大幅に向上します。

少ない物理的ストレス

放電加工では加工中の物理的ストレスが非常に少ないため、材料の歪みや破損のリスクが低減されます。これは、精密な部品製造において特に重要な特性です。

工具の摩耗が非常に少ない

放電加工では、電極が物理的に被加工物に接触しないため、工具の摩耗が非常に少ないです。これにより、長期間にわたって同じ電極を使用でき、コスト削減にも繋がります。

熱影響ゾーンが小さい

加工中に生じる熱影響ゾーンが非常に小さいため、加工後の材料の性質変化を最小限に抑えることができます。これにより、加工後の材料強度や耐久性が保たれ、品質の高い製品製造が可能です。

表面処理の自由度

放電加工は表面仕上げの選択肢も広がります。例えば、特定の表面テクスチャや模様の加工が可能であり、製品の見た目の質を高めることができます。

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ミノル的視点

放電加工は、非接触加工のため物理的ストレスが少なく、高硬度材料や複雑な形状の加工に優れ、工具の摩耗も非常に少ないため、コスト効率も良い技術です。加工精度が高く、熱影響ゾーンも小さいため、品質の高い製品作りに貢献します。

放電加工のデメリット

放電加工は多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。これらを理解することは、加工方法を選定する際に重要です。

加工速度の問題

放電加工の一つの大きなデメリットは、加工速度が比較的遅いことです。特に大きな面積を加工する場合や、深い加工を必要とする場合、他の加工方法に比べて時間がかかる可能性があります。これは、大量生産を必要とする業務には不向きかもしれません。

高い運用コスト

放電加工は設備の初期投資だけでなく、メンテナンスコストも高いです。電極の消耗品や特殊なダイエレクトリックフルードの必要性がコストを押し上げる要因となります。また、電力消費も大きいため、運用コストが増大する可能性があります。

熱影響ゾーンの問題

放電加工では熱影響ゾーンが小さいというメリットがありますが、それでも微量ながら材料に熱影響を与えることがあります。これが原因で材料の微細な構造変化が起こることがあり、特に精密な要件を持つ加工物には影響を与えることがあります。

表面の粗さ

加工後の表面が粗くなる可能性があります。特に精度を求める加工においては、後処理としてさらなる表面研磨が必要になることがあります。これにより、加工時間とコストが増加します。

電極の消耗

放電加工では電極が消耗品として扱われます。これが意味するのは、定期的に電極を交換する必要があり、そのたびにコストが発生することです。電極の耐用回数をいかに伸ばすかが、コスト削減の鍵となります。

環境への影響

使用されるダイエレクトリックフルードが環境に悪影響を及ぼす可能性があります。この液体は処理が困難であり、環境保護規制により厳しく管理されています。適切な処理が求められることは、運用の際の重要な考慮事項です。

材料の制限

放電加工は導電性のある材料に限られるため、非導電性材料には使用できません。これにより、加工できる材料の範囲が限定されることがデメリットとなる場合があります。

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ミノル的視点

放電加工の運用コストや加工速度の問題は特に、大量生産を目指す場合やコスト感度が高いプロジェクトにおいて重要な検討点です。また、環境への配慮として、使用されるダイエレクトリックフルードの適切な管理と処理が必須です。

最後に

放電加工(EDM)は、その高度な精密性と柔軟な加工能力で多くの製造業者にとって不可欠な技術です。微細なスパーク放電を利用して硬質材料も含めた幅広い素材を精密に加工できる点は大きな魅力です。しかし、遅い加工速度や高コスト、環境への影響などのデメリットも理解し、適用する際にはこれらの要素を総合的に考慮する必要があります。正しく利用すれば、放電加工は複雑な形状や精密部品の製造において他の追随を許さない結果をもたらすでしょう。

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ミノル(覚醒中)

放電加工(EDM)、それはまるで雷の力を操るかの如し!電極と対象物の間で繰り広げられる電気的スパークが、金属を精密に削り出す。困難を極める硬質材料も、EDMならではの精度で思い通りの形に!この技術は、もはや工業のフロンティアを切り開く剣とも言えるだろう。どんな複雑なデザインも、EDMがあれば現実のものとなる。

指この記事の監修者
ニッシン・パーテクチュアル株式会社
代表取締役社長 中村稔

金型関連のものづくりに20年従事し、会社の社長としてリーダーシップを発揮。金型工業会と微細加工工業会にも所属し、業界内での技術革新とネットワーキングに積極的に取り組む。高い専門知識と経験を生かし、業界の発展に貢献しております。

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